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学歴不問で対象者を大幅拡大! JAXAの宇宙飛行士選抜ってどんな試験内容なの?

 

構成・文:みんなの宇宙編集部(Yahoo! JAPAN) 制作協力:JAXA

12月20日の正午より宇宙航空研究開発機構(JAXA)が13年ぶりに日本人宇宙飛行士候補者の募集を開始します。初めて"学歴不問"とするなど応募資格を大幅に緩和した今回の宇宙飛行士候補者募集。
ここでは応募資格の主な変更点や選抜方法、そして宇宙飛行士選抜ならではの過去に行われた試験内容などをご紹介します。

大幅に緩和された応募資格


今回は多様な人材の応募を求めて学歴や専門性は不問とし、3年以上の実務経験(※)と医学的特性を満たしていれば応募可能となりました。そのため前回の2008年募集時までは求められた自然科学系の4年制大学を卒業していることや、3年以上の自然科学系分野での実務経験は不要です。

また宇宙船に搭乗する制約から身長は158.0~190.0cmと制限されてきましたが、宇宙船が改良され、新規開発が進んだことで149.5~190.5cmと緩和されました。体重についても、選抜過程で評価は実施しますが、生活指導などにより増減がある程度可能であるため、今回の応募資格からは撤廃されました。ただし、矯正視力は前回と同じく両眼とも1.0以上、また色覚・聴力が正常であることが必須です。

米国における船外活動を模擬した水中での訓練に必要となるため、前回までは応募時に必須としていた泳力についても、選抜後の訓練時に習得することで、今回の応募資格からなくなりました。
※修士号取得者は1年、博士号取得者は3年の実務経験とみなす

選抜方法の概要


宇宙飛行士候補者の選考は12月20日正午に募集開始となる「書類選抜」を皮切りに、第0次選抜では「英語試験」を経て、大学の教養課程相当の人文科学・社会科学分野を含む広範な素養・知識を評価するための「一般教養試験」、大学卒業程度の「STEM分野の知識や論理的思考力を評価するための試験」、宇宙飛行士に必要な特性全般について評価するための「適性検査」などが行われます。

第一次選抜では人間ドック程度の「医学検査」や国際的なチームで宇宙滞在を行うために必要なミッション遂行能力を評価する「資質特性検査」、宇宙飛行士として必要な状況認識能力や空間認識などについて評価する「運用技量試験」などを行い、第二次選抜以降は複数回の「面接試験」も実施されます。

このような1年以上に及ぶ長丁場の選抜を経て、宇宙飛行士候補者が誕生します。

過去に実施された宇宙飛行士選抜試験

宇宙飛行士選抜試験とは一体どのようなことが行われるのでしょうか。ここでは過去実施された宇宙飛行士選抜試験の内容を一部ご紹介します。

▲参考文献:宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶(著者 内山崇)

・平衡機能検査
回転加速度負荷試験(別名:回転椅子)
身体中に器具をつけマスクで両目を完全に覆った後、座っている椅子が回転している間に頭を左右上下に動かし眼振などの生理反応を計測する検査です。

エアーカロリック検査
仰向けになり、片耳ずつ温風冷風を交互に吹きかけることで、わざとめまいを起こし内耳と小脳の働きをみる検査です。
 
・パイロット能力測定
コンピューターゲームを使用しオペレーション能力を測る試験で、マニュアルを読んだ後に練習時間を経て90分間一定のタスクをこなし続けるというものです。

・心理適性検査
ピンにワッシャを通す単純作業を時間制限内に繰り返し行うというもの。前回の宇宙飛行士選抜試験のファイナリストとなった内山崇さんによると、試験官は試験中しきりにメモしており、それは時間内にクリアした本数の記録だけでなく試験の合間に発した言葉や反応をメモしていたようだとのことでした。

▲参考文献:宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶(著者 内山崇)

・体力検査
反復横跳び、走り幅跳び、座位前屈、20メートルシャトルラン(※)などで体力を測定します。これらの種目は学生時代に体育の授業で一度はやったことがある方も多いのではないでしょうか。
※20mを合図に合わせて往復。合図は1分ごとに短くなり、合図に間に合わなくなったら終了

・耳鼻咽喉科検査
目隠しをした状態でその場で足踏みをする試験。試験中は腕を大きく振りつま先が床から離れる程度でなく、できるだけ太ももを高く上げることで、骨盤の向きと脚力の左右差の測定を行います。

・24時間蓄尿検査
24時間にわたり尿を全て集めて検査するもので、1回だけの採尿では分からない腎臓機能の詳しい検査を行えるとされています。

過去2回の最終選抜試験で実施された"閉鎖環境試験"とは  

▲宇宙飛行士養成棟 閉鎖環境適応訓練設備(画像提供:JAXA)

厳しい選抜プロセスを勝ち抜いた者のみ挑戦できる最終選抜試験では、宇宙ステーションを模した窓のない閉鎖空間でファイナリスト全員が一緒に生活を行う "閉鎖環境試験"と呼ばれる長期滞在適性検査が過去2回行われています。前回の2008年時もファイナリスト10人が一緒に1週間生活しました。閉鎖空間は5台の監視カメラで24時間常時監視され、各所に設置されているマイクで音声も全て録音されています。そのような特殊な環境のなか、さまざまな課題に取り組む様子を長時間継続的に観察することで、短時間の面接や検査では測定しにくい対人関係能力や集団内で仕事を動かす能力を評価できます。

過去2回の閉鎖環境試験で出題された内容をご紹介します。
▲白いジグソーパズル:マンガ「宇宙兄弟」より(画像提供:小山宙哉/講談社)

・白いジグソーパズル
制限時間3時間で真っ白な180のピースを組み上げ完成させるという個人の集中力と忍耐力を見る試験。マンガ『宇宙兄弟』で目にし、実際にこんな試験あるの? と思った方も多いのではないでしょうか。11月に国際宇宙ステーション(ISS)から帰還された星出宇宙飛行士が受験した1998年の選抜試験で実際に出たそうで、非常に難解で誰も完成させることができなかったそうです。

・100羽の折り鶴
前回の2008年の選抜試験では、1日1時間×4日間で1人あたり100羽の折り鶴を折るという課題が出題されました。ファイナリスト10人で最終日までに完成させた千羽鶴は「最初に宇宙に行く人が宇宙に持って行く」と約束していたそうで、油井宇宙飛行士の初フライト時に実現されました。
▲ISS内で地球を背景にファイナリスト10人が折った鶴が舞う様子(画像提供:JAXA/NASA)


日本では現在までに11名の宇宙飛行士が誕生しましたが、このような厳しい選抜試験を経て「宇宙飛行士候補者」となり、候補者となった後も厳しい訓練業務を行うことで立派な宇宙飛行士になっていきます。
今回は大幅に応募資格が緩和されて初めての選抜試験。果たしてどんな方が候補者となるのでしょうか。要注目です。


挑戦者へのエール


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