みんなの宇宙

平野陽三、宇宙へ行く。vol.77 12月7日:出発前日。

 

構成・文:平野陽三

出発まであと1日。

さて、今日は朝からコミッションの宣誓式、そのあとは記者会見、ロスコスモスのトップとのお茶会など、さすがは打ち上げ前日、久しぶりにイベントが立て続けにスケジュールされていた。

部屋でフライトスーツに着替えながらふと、そういえば地上でこれを着るのも、今日と明日の2日を残すのみだと思うと、ちょっと寂しくなった。真新しいと思っていた青のフライトスーツは、肩や腰の部分が擦れて少し毛羽立っていた。数ヶ月間の訓練の記憶は、フライトスーツの生地に刻まれていた。

ガラスで仕切られたカンファレンスルームに入ると、反対側の部屋には関係者やカメラマンが大勢集まっていた。記者会見はコロナの影響でオンライン中継となったけど、たしかにここに加えて各社メディアが集まっていたら、ロスコスモスもそのリスクは取り切れなかっただろうと思う。

「打ち上げを明日に控えた今の気分はどうですか?」という記者からの質問に対し、前澤は、「ワクワクドキドキして、遠足を明日に控えた子供のように興奮しています。」と回答した。そのときのキラキラした目は本当に子供のそれと同じで、明日が楽しみでしょうがない、といった顔をしていた。僕ももちろん明日を楽しみにしているし、そのためにこの100日間訓練もしてきた。でも、僕との決定的な違いは、すべて自分で道を切り開いてきた自信と責任であり、そしてロシアや宇宙関係者への深い尊敬の念を持ちつつも、自分が最大限楽しむことによって、誰かに何かを伝えようとする強い信念である。

突拍子もないことをするときには、必ずアンチの声があがる。アンチの声は、数に関係なく侵食する。大きなことを成そうとするときには、それを良く思わない人たちの否定的な意見が出てくる。否定的な意見は、前向きな気持ちを挫く。そんなことは分かっていても、絶対に挑戦することはやめないし、楽しむことは決してやめない。それを言葉ではなく、行動として見せること。それにはどれだけの労力と忍耐が必要か、当人になってみないときっと想像に及ばない。

「そんなに走り続けて疲れないんですか?」と何度か聞いたことがあるけど、「そりゃ俺だって、腰にくるときあるよ」なんて笑って言ったりもする。だけど、決して挑戦することをやめないのだ。挑戦し続ける姿を人や子供達に見てもらうことで、伝えられる何かがあると心から信じている。僕が知る十数年、前澤の姿勢はずっとブレていない。

そんな前澤に、このクレイジージャーニーのクルーに選んでもらえたこと。そしてそんな前澤と、一緒に宇宙を目指せること。前澤に会いたい人や、宇宙に行きたい人が、世界中にごまんといることを知っている。知っているからこそこの幸せを全身で噛み締めて、明日からは僕自身も本気で楽しんでこようと思う。12日間は、絶対に「あっ」という間に終わる。気が付いたらもう日本にいて、家でこたつに入って正月を迎えているのは間違いない。だけど、人生で最高の「あっ」という間であることも間違いない。明日はきっと、僕のラッキーボーイランキングは世界でトップクラスだ。

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平野陽三(ひらの・ようぞう)
1985年、愛媛県生まれ。2007年にZOZOTOWNを運営する株式会社「スタートトゥデイ」に入社、フルフィルメント部門の責任者として従事。現在は前澤友作氏のマネージャーと、「スペーストゥデイ」のプロデューサーを務める。


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宇宙編集部 

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