【まとめ】「働き世代」の本格接種開始を前に知っておきたい「ワクチン」「副反応」のことを解説

取材・文:末吉陽子(やじろべえ) 制作協力:Medstar Washington Hospital Center米国内科専門医・感染症専門医 安川康介医師

若者世代にも広がりはじめた新型コロナウイルスワクチンの接種。若いほど副反応が出やすいという報道もあり、不安を感じている人も少なくないでしょう。こちらの記事では、若者への接種が先行する米国に住む安川康介医師(感染症専門医)に、働き世代の人たちが知っておきたい、ワクチンや副反応のことについて質問しました。
※2021年7月13日段階の情報をもとに作成しています。

【1】「ワクチン接種」への不安に対するアドバイス

―個別接種や集団接種ではファイザー、職域接種ではモデルナを使っていますが、どちらのワクチンが良いのでしょうか? 基本的に仕組みや効果に関しては大きな違いがないと考えられています。ちなみに両者の違いは、「コーラとペプシみたいなもの」と例えられることがあります。ただし、副反応の関節痛などはモデルナ製ワクチンのほうが若干出やすいといわれています。またファイザー製ワクチンはイスラエルなどの国で先行して使用されたため、実社会での効果や変異ウイルスへの効果に関しては情報が多いといえます。個人的には、すぐに受けられるほうを受けてもらいたいと思います。

―ワクチンを接種すると血栓ができるって本当でしょうか? ファイザーとモデルナは、血栓との関連は確認されていません。アストラゼネカ製のワクチンは、非常に稀に血小板の低下を伴う特殊な血栓症が生じるという報告があります。ワクチン接種約10万~25万回に1回程度、接種後1ヶ月以内に生じるとされています。

―妊娠中のワクチン接種は問題ありませんか? 問題ないとされています。新型コロナワクチンの接種により不妊、流産、先天異常のリスクを高めることはないと考えられ、米国では妊娠中の接種を推奨しています。妊娠中の女性は、同じ年齢層の妊娠していない女性に比べて、新型コロナウイルスに感染した場合、重症化しやすいといわれています。不安がある場合や接種の時期に関しては、担当の産婦人科医と相談することをおすすめします。

<参考>(外部サイト)
Centers for Disease Control and Prevention - COVID-19 Vaccines While Pregnant or Breastfeeding
厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A

また胎盤を通してお腹の赤ちゃんに抗体が移行することも分かっています。それにより赤ちゃんがどれくらい感染しにくいのかまでは、明らかではありませんが、新型コロナウイルス感染症から守る効果が期待されています。

<参考>(外部サイト)
AJOG - Coronavirus disease 2019 vaccine response in pregnant and lactating women: a cohort study

―妊活中でもワクチンを接種して大丈夫ですか? 妊活中にワクチンを接種したことで何か問題がおきるということは報告されていません。厚生労働省は「これから妊娠を計画されている方もmRNAワクチンを接種できます。mRNAワクチンが生殖器に悪影響を及ぼす報告はなく、ワクチンのために妊娠のタイミングを変更する必要はありません」としています。不妊治療中の方のデータは限られていますが、米国生殖医学会は「不妊治療を受けている者や妊婦は、適正基準に従って ワクチン接種を推奨されるべきです。ワクチンは生きたウイルスではないため、ワクチンを投与したからといって妊娠の試みを延期する理由はなく、また2 回目の接種が完了するまで不妊治療を見合わせる理由もありません」としています。米国医師会が発行する医学雑誌「JAMA」に掲載された論文によると、健康な男性にファイザーやモデルナの新型コロナウイルスワクチンを1回または2回接種しても、精子の数や質は低下しないとの報告がありました。またある研究では、体外受精での不妊治療中の36組のカップルを調べたところ、ワクチンを受けた前後で、採卵までにかかる日数や採卵された卵子の数などに変化はありませんでした。

<論文>(外部サイト)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する日本生殖医学会からの通知~海外の動向について~(2021 年 2 月 22 日、3 月 23 日版)
JAMA - Sperm Parameters Before and After COVID-19 mRNA Vaccination
BMC - Does mRNA SARS-CoV-2 vaccine influence patients' performance during IVF-ET cycle?

―重症化リスクが低いとされる20代~40代でも、ワクチンを接種したほうがいいのでしょうか? ワクチン接種のリスクとベネフィットを天秤にかけて考えると、個人的には接種したほうがいいと考えます。確かに若い世代は、新型コロナウイルス感染症の重症化や死亡のリスクは低いとされています。だからといって侮ってはいけません。私はアメリカで多くのコロナ患者を診てきましたが、若くても感染して肺炎になり、相当辛い症状で苦しむ人は少なくありませんでした。重症化しないにしても、罹らないに越したことはありません。

軽い肺炎であれば肺機能にそこまでの影響は残らないかもしれませんが、炎症が激しいと肺に傷のようなものができる可能性があります。その他にも、嗅覚障害や味覚障害など罹患後の生活に支障をきたすような後遺症が報告されています。また自分は軽症だったとしても、自分から家族や友人に移してしまうリスクもあります。こうしたことから、接種はリスクよりもベネフィットのほうが大きいと考えています。

―注射への恐怖心で気絶したり気分が悪くなったりする「迷走神経反射」が心配です。不安を払しょくする方法はありますか? 迷走神経反射そのものに危険はありません。ただし、迷走神経反射が起きたあとに転倒してしまう危険があるので、座ったり横になったりして怪我をしないように気をつけたほうがいいでしょう。体調が悪い時や緊張、ストレスによって生じることがあるので、ワクチン接種前はできれば十分な睡眠をとり、接種時にあまり注射に集中しすぎないほうがよいと思います。

過去にワクチン接種などで迷走神経反射を経験したことがある人は、接種会場によっては、ベッドに横たわった状態で接種を受けられることもあるかもしれないので、不安な場合は医師などに相談をしてみるといいでしょう。

―他のワクチンと同時接種しても問題ないですか? 同時接種の安全性やワクチンの有効性に関する十分なデータがありません。そのため、現在、日本では原則的には接種の前後14日は、インフルエンザを含めた他のワクチンの接種は控えることが推奨されています。ただし、厚生労働省は、創傷時の破傷風トキソイド等の緊急性を要するものに関しては、例外として2週間を空けずに接種することが可能としています。現在米国CDC(感染症対策の総合研究所)は従来のワクチンの知見を踏まえ、時期をずらさずに接種可能と発表しています。

<参考>(外部サイト)
厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A

【2】「ワクチンの副反応」への不安に対するアドバイス

―若い人に副反応が出やすいと言われているのはなぜでしょうか? それは「若い人に出やすい」というよりも、「高齢者に出にくい」という理解が正しいです。ファイザーやモデルナのワクチンは、簡単に言うと「免疫系が新型コロナウイルスだと勘違いする成分を体内で作るための材料」です。よってワクチンを接種すると、新型コロナウイルスに感染したと体は勘違いし、免疫細胞からサイトカイン※という物質が放出されます。するとそのサイトカインが脳の体温調節を司る部分に働きかけ、体温が上がったり、炎症によって全身性の症状が出たりします。高齢になると免疫機能が低下しますので、こうした副反応が出にくいというわけです。

※サイトカインとは細胞から分泌される小さなタンパク質で、免疫や炎症反応などに関する細胞同士の情報伝達に使われます

<参考>(外部サイト)
npj - The how's and what's of vaccine reactogenicity

―若い人に、特に出やすい副反応を教えてください。 ファイザーの臨床試験(16歳から55歳のデータ)によると、出やすい副反応の順に「倦怠感」「頭痛」「筋肉痛」「悪寒」となります。倦怠感は2回目の接種時に59%の確率で生じると報告されています。
<参考>(外部サイト)
The new england journal of medicine
出典:JAMA「新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン接種による反応原性」を元に作成

―副反応に備えて、予防的に解熱剤を飲んでおくべきでしょうか? 以前のワクチンでの研究で、予防的に解熱鎮痛剤を飲むことにより、抗体が少しできにくかったという報告があります。症状が出る前に、ワクチン接種前や接種時に解熱剤を飲むことは推奨されていません。

<参考>(外部サイト)
NIH - Effect of prophylactic paracetamol administration at time of vaccination on febrile reactions and antibody responses in children: two open-label, randomised controlled trials
厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A

―副反応が出たときの対処法はありますか? 頭痛、発熱、関節痛、接種部位の痛みなどの副反応が出てしまい辛い場合は、解熱鎮痛剤を飲んで対処して構いません。辛くなければ、飲まなくて大丈夫です。私は2回目の接種後に強い倦怠感が出ましたが、特に対処はせず、時間とともに回復していきました。個人差もありますが、3~4日程度で症状が治るケースが多いようです。

―解熱剤は「アセトアミノフェン」がいいと言われています。それ以外の市販のものでもいいのでしょうか? はい、大丈夫です。アセトアミノフェンと、それ以外のドラッグストアでも手に入るような解熱剤(ロキソプロフェン、イブプロフェン、アスピリン、ジクロフェナック)は、別グループの解熱剤です。普段飲み慣れている解熱剤があれば、そちらで良いでしょう。薬の添付文書をよく読み、用法用量を守って、適正に使用していただければ問題ありません。

【3】「ワクチン接種前後の生活」に対するアドバイス

―接種前後にしないほうがいいことはありますか? 飲酒やサウナなどは大丈夫ですか? 特にありません。少量の飲酒や入浴は問題ないと考えます。ただし、熱湯やサウナなど脱水症状が懸念されるものは控えたほうがよいかもしれません。またワクチン接種後に接種部位の痛みや倦怠感、発熱や筋肉痛などの副反応が出ることがあるので、無理をしないスケジュールを組むことが大切です。

―「接種後は水を飲むと良い」というネットの情報を見かけたのですが本当でしょうか? 一般的に脱水を避けるのは良いことですが、水を飲んだからといって炎症による副反応が出にくくなることはなく、逆に飲まなかったからといって副反応が出やすいということもないと思います。

―ワクチンを接種したら、マスク無しで外出しても大丈夫ですか? 米国CDCは、ワクチンの2回目接種から2週間経った人はマスク無しで人と会ってもいいというガイダンスを出しています。

<参考>(外部サイト)
CDC - When You've Been Fully Vaccinated

米国では、すでに国民の半分近くが2回目接種を終えており、マスク無しで生活する人が増えてきました。私の病院でも新型コロナウイルス感染症による入院患者さんをほとんど見かけなくなりました。ただ、日本ではワクチン接種を完了した人の割合は、まだそれほど高くなく、ワクチンの効果も100%ではありませんので、あまり気を緩めすぎると感染の再流行が懸念されます。そのため、感染がある程度落ち着くまでは、引き続きマスクや3密回避などの基本的な感染予防対策をしたほうがよいでしょう。

―ワクチンを接種している人同士であれば、飲み会をしてもOKですか? 確かにお互いに感染する・させるリスクは低いです。米国では、上記のとおりワクチン接種を完了した人に対する行動のガイダンスがあります。日本でもある程度ワクチン接種が進んだ段階で、飲み会を含めた室内の行動や屋外の行動については、厚生労働省や国がガイダンスを発表することを期待します。

制作協力
安川 康介(やすかわ こうすけ)
ワシントンD.C. MedStar Washington Hospital Center ホスピタリスト。2007年慶應義塾大学医学部卒業。日本赤十字社医療センターにて初期研修を終了後、渡米。ミネソタ州ミネソタ大学医学部内科レジデンシー、テキサス州ベイラー医科大学感染症フェローシップ修了。米国内科専門医・感染症専門医。 ※取材はオンラインで実施しました

関連リンク
新型コロナウイルス感染症まとめ -Yahoo!ニュース

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