【医師の解説】年末年始「忘年会・納会・新年の会食」での感染対策の注意点

 

取材:榎並紀行(やじろべえ) 執筆:末吉陽子(やじろべえ) 制作協力:谷口俊文医師<千葉大学医学部附属病院感染制御部・感染症内科>

ワクチン2回接種が全国民の75%超まで進み、感染者数は減少傾向にあります。飲食店への時短営業要請や酒類提供の規制が解除される自治体がほとんどとなり、街中に活気が戻ってきました。そうした中で迎える忘年会シーズン。飲み会や会食を検討されている人は少なくないかもしれません。とはいえ、冬の到来で懸念されている第6波も気になるところ。年末年始に人が集まって飲食するときの感染リスクを下げるための注意点を専門家に聞きました。
※2021年11月15日段階の情報をもとに作成しています。

飲食店で忘年会・納会・新年の会食をするとき、個人ができる感染対策は?

―そもそも飲酒を伴う会食は、なぜリスクがあるとされているのでしょうか?

理由としては「マスク無しで長時間の会話が行われやすい」「密な状態で接触しやすい」「アルコールが入ると注意力が低下して感染対策を徹底しにくくなる」「大きな声を出しやすくなる」などが挙げられます。事実、クラスターの背景を解析すると、こうした感染対策の「穴」が揃ったときに発生しやすいことが分かっています。

―実際にそうした調査結果があるということですね。 はい。国立感染症研究所(以下、感染研)の調査では、「飲酒のない会食のみ」は「会食を行わなかった場合」と比べて感染リスクにほとんど差はありませんでした。しかし「飲食のある会食・飲み会」になると、2.2倍にまで増加しています。


「新型コロナワクチンを接種していない者における新型コロナウイルス感染の社会活動・行動リスクを検討した症例対照研究」(暫定報告) - 国立感染症研究所(外部サイト)

―感染リスクを抑えるためには、どれくらいの「参加人数」「滞在時間」が望ましいでしょうか。 あくまでひとつの目安として「4人まで」「2時間まで」が望ましいとされています。まず参加人数については、感染研の調査では会食や飲み会などの際に「自身を含めて5人を超えた場合」に感染確率が高くなることが分かっています。最大同席人数が5人未満では1.4倍で、5人以上になると2.2倍です。

次に滞在時間について。最大滞在時間が2時間未満の場合は、会食を行わなかった場合と比較したときの感染リスクとほとんど変わりませんが、2時間を超えると1.9倍にまで上がります。

参加人数や滞在時間による感染リスクを考えるときには、どのような行動がデータにつながっているのかを考えることが大切です。たとえば大人数だと席の移動が発生したり多くの人と話す機会が増えたりしがちです。また時間が長くなればなるほどアルコール摂取量が増えやすく感染対策がおろそかになる可能性が高まります。これらをふまえると、参加は「4人まで、2時間まで」という指標が妥当だと思われます。

―では「マスク会食」は効果があるのでしょうか? 現実的ではないかもしれませんが、マスクをしてほしいというのが率直な考えです。というのも、マスク会食の効果は感染研の調査でも認められているからです。「食事や飲み物を口に運ぶとき以外つけていた」場合は感染確率が0.98倍なのに対し「食事や飲み物が提供されたタイミングで外した」場合は1.4倍、「つけていなかった・席について外した」場合は4倍にまで跳ね上がります。このことが示しているのは「マスクをしていない時間が長いほど感染リスクは高まる」ということ。よって食べ物や飲み物を口に運ぶとき以外は着用することが望ましいと考えています。 

―ここまでのお話を伺っていると「その場に感染者がいると仮定して、どう行動するべきかを考えること」が大事ということなのかなと感じました。 大事なのは「ダメージコントロール」の考え方です。たとえば会社のメンバーで飲み会を検討しているとして、もし部署の全員が感染すれば機能が停止してしまい、業務が回らなくなるというダメージが想定されます。そうならないためにも「席を移動しない」「時間制限を設ける」などのルールを決めて、ダメージを意図的にコントロールすることが重要。他にも、一斉に宴会をするのではなくグループごとに複数回に分けて開催するなど、ダメージを最小限にすることが大事だと考えます。



オフィスでの納会、親戚の集まりでの感染対策は?

―オフィスや家で会食するときの感染対策についてはいかがでしょうか? オフィスでの納会も、飲食店で行う対策と変わりません。「換気に気を配ること」「なるべく少人数で、席を移動しての会話は控えること」「料理は大皿から取るのではなく、あらかじめ1人分を小皿に分けておくこと」などです。またお酌をするときは、注ぐ人はマスクを着用し、ビールの瓶とコップが接触しないように気を付けてもよいのではないでしょうか。基本とされている感染対策を徹底することが重要です。

―特に親戚同士の集まりは気が緩む可能性が高そうなので、より一層基本の対策を徹底する心構えが必要ですね。 そうですね。2020年~2021年の年末年始や2021年5月のゴールデンウィーク明けに高齢の感染者が急増したときなどは、家族の集まりが感染拡大の一因になったケースが多々見受けられました。親戚同士の集まりはどうしてもリラックスして対策が緩みがちになるので、基本的対策を徹底することと、それからできればワクチン接種を済ませていることを前提に集まってもらいたいです。



2021年冬期に「第6波」を引き起こさないために

―ワクチンの感染予防効果の減少時期と忘年会シーズンが重なるのではないかということで、第6波を懸念する声もあります。 12月から1月にかけては、65歳以下のワクチンの抗体価が減少するタイミングと重なることも懸念点です。感染予防効果は時間とともに薄れてきますので、感染対策を緩めてしまうと第6波の引き金になりかねないと考えています。また忘年会はもとより、年末年始の親戚の集まりも懸念材料です。現在、新規感染者数が抑えられている状況が続いているので、油断して感染対策を怠る人も出てくるかもしれません。

イスラエルやイギリス、シンガポールなどでは、ワクチン接種から4~6か月経過すると、ワクチンを打っていても感染する「ブレイクスルー感染」がみられます。日本では8月と9月に若年層の接種が一気に進んだため、ちょうど年末年始頃に多くの人の抗体価が減少してくることが予想されます。こうした状況下において、忘年会や親戚同士の集まりが増えると感染再拡大の引き金になりかねないと思います。

<参考>(外部サイト)
Antibody Persistence through 6 Months after the Second Dose of mRNA-1273 Vaccine for Covid-19 - NEJM

―そう聞くと、今年も集まらないほうがいいのかもしれない......と悩むところですね。集まりを中止する判断は何をもとに線引きすれば良いでしょうか? 感染の流行状況を踏まえて判断しましょう。その際、目安になるのは国や自治体が出している指標です。たとえば政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は、医療の逼迫度ごとに必要な対策を判断するための指標を5段階のレベルに分類しました。レベル2になると、感染増加の傾向がみられるため、宴会などは計画の見直しを検討する必要が出てくると思います。レベル3は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの対策が必要になるため、迷わず中止したほうがいいです。

―レベルはあくまでも指標であり、依然コロナ禍であるということを忘れてはいけない、ということですね。 現在、新規感染者数が抑えられていることに安心している人は多いと思います。しかし、いまはまだ新型コロナウイルスが消えたわけではなく「くすぶっている」状態だと考えられています。もしかしたらワクチンの効果により、無症状や軽症で抑えられている可能性もあるわけです。つまり、いつまた感染が拡大するか分からないということを認識し、感染対策をやめないことが大事です。

感染対策には、いくつもの要素があります。言わば「層」のようなもので、その層をどれだけ積み重ねることができるかで感染リスクは変わってきます。なかでもワクチン接種というのは、かなり分厚い層だと言えます。会食を実施するのであれば、ワクチンを接種できる人は接種し、なおかつ基本的な感染対策を順守したうえで行ってほしいと思います。

制作協力
谷口俊文(医師)
専門はHIV感染症、移植感染症や一般感染症。2001年千葉大学医学部卒。2013年千葉大学大学院医学研究院にて医学博士取得。現在は千葉大学医学部附属病院感染制御部・感染症内科に所属。

関連リンク
新型コロナウイルス感染症まとめ -Yahoo!ニュース

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