子どもへの接種や3回目接種について気になることを専門家が解説

 

制作協力:峰宗太郎(病理専門医、薬剤師、医学博士)、内田舞(米国小児精神科医)、木下喬弘(救急専門医、外傷専門医、公衆衛生修士)、黒川友哉(耳鼻咽喉科医、薬事規制)、曽宮正晴(大阪大学産業科研究所)、谷口俊文(米国内科専門医、米国感染症専門医、総合内科専門医・指導医、感染症専門医・指導)、安川康介(米国内科専門医、米国感染症専門医)

日本でも5~11歳の子どもへのワクチン接種が承認され、3月から接種を開始することが決まりました。また現在、オミクロン変異ウイルスの感染拡大が続くなかで3回目の接種が進み始めています。幼い子どもへの接種について、また3回目接種について、どのように判断すればいいのでしょうか。峰宗太郎さん(病理専門医、薬剤師、医学博士)ファシリテートのもと専門家のみなさまに集まっていただきインタビューを行いました。(取材日:2022年1月20日)
※取材時の内容を2022年2月4日段階の情報をもとに構成して作成しています。

専門家のみなさま(昇順、敬称略)
内田舞(米国小児精神科医)
木下喬弘(救急専門医、外傷専門医、公衆衛生修士)
黒川友哉(耳鼻咽喉科医、薬事規制) ※黒は旧字
曽宮正晴(大阪大学産業科研究所)
谷口俊文(米国内科専門医、米国感染症専門医、総合内科専門医・指導医、感染症専門医・指導)
安川康介(米国内科専門医、米国感染症専門医)

―3月からは5~11歳の子どもを対象にした新型コロナウイルスワクチンの接種が始まることが決まりました。一方で、12歳以上と同様に「努力義務」を課すかどうかについては、結論を持ち越しています。子どもへの接種をどう受け止めたら良いでしょうか。

木下喬弘
メリットデメリットを比較するのがそもそも難しいと思います。それは子どもが何人感染するかわからないからです。昨年11月・12月は子どもが感染するリスクが少なく、接種の是非を考える必要があまりありませんでした。感染が拡大してきて、子どもが感染するリスクが高いとなると、感染時の合併症とワクチン接種時のリスクを比較することを検討しなければなりません。少なくとも、ワクチン接種のリスクは感染した時のリスクよりは低いと考えています。ただ「打たないのが悪」というわけでありません。もともと子どもの重症化率は低いので、打たないという選択肢もあると思います。感染が拡大しているいまの状況では、自分の子どもが感染する可能性も考えて、接種を検討するのがいいかなと思います。
黒川友哉
いつ突然広がるかわからないのがこの新型コロナかと思っています。今回のオミクロンも一気に広がったので、打てるときに打っておくのがいいように思います。子どもでどれほどの有効性が続くかですとか、感染が広がり始めて打つというタイミング的にも、何が正解かはわからないです。ただ副反応については、一定の副反応はあると思いますが、対応が予想できるためそれほど恐れるものではないのかなと思います。
内田舞
「予防」はやってよかったと気付くのがなかなか難しいことだなと思っています。起こり得たことを防げたというのはわかりにくいです。でもコロナというのはいつどんなタイミングでどんな変異ウイルスの波がくるのかわからないです。その波が来たときに「できるだけかからないように」、また「かかったとしたら重症化しないように」予防接種をしておくことが重要です。
私は自分自身が妊娠中にワクチンを打ったことで、妊婦さんへのワクチンのリスクとベネフィットを語り続けています。妊婦さんはコロナ感染症による重症化リスクが高いこと、そして接種の場合のリスクは低いことがわかっている一方で、妊婦さんが「妊娠中のワクチンは何となく怖い」という感覚があるのはよくわかります。しかし、その「なんとなく怖い」感覚によって予防接種をしなかったことで、コロナ感染症で亡くなってしまったり、赤ちゃんに影響が出てしまったりするケースが世界中で報告されています。妊婦さんとお子さんは感染した場合の重症化リスクが違うので同等に語れませんが、気持ちとして、幼い子どもにワクチン接種するのはなんとなく怖いと感じる思いだけで子どもの接種をするかしないかを決めてはなりません。
子どもへのワクチン効果の有効性はわかっていますし、12歳以下はワクチン量3分の1というのもあって、副反応はかなり低いというのもデータとしてわかっています。米国では800万回以上5~11歳への接種はされており、心筋炎に関しては11件報告されており、回復されています。効果があり、副反応はマネージできるワクチンによって、将来起こり得る被害を抑えられるという意味では接種をおすすめしていいように思います。 コロナ感染症における小児の重症化例は幸い日本では少ないですが、米国では800人以上もの小児がなくなっています。このような子どもの重症化や死亡を防ぐ役割として、ワクチンの役割は本当にありがたいと考えています。
私は自分の子どもに打ちましたし、副反応はほとんどなかったです。
またもう1点、このコロナの状況においてこの1年間で米国ではいま子どものメンタルヘルスが国家の危機として問題になってきています。日常生活が失われているなかで、慢性のストレスというのをオトナはもちろん子どもも感じていると思います。パンデミックを終わらせるための一つの手段がワクチンであると思います。
CDC「COVID-19 Vaccine Safety in Children Aged 5-11 Years」(外部サイト)をもとにYahoo! JAPANで画像制作(制作協力:峰宗太郎)

谷口俊文
日本小児科学会が出したステートメント(PDF形式・外部サイト)には、有効性や副反応に加えて、長期化する行動制限が小児に与える影響が大きくなっているということが書かれています。ワクチンを接種することで、学級閉鎖の繰り返しを防げるようなこと期待しているのかなと感じさせます。多くのこどもが予防接種を受けるメリットを日本小児科学会は考えているのではないでしょうか。
安川康介
自分の子どもは接種しました。医者の仲間をみても子どもにはみんな接種させている印象です。シンプルに、感染した時のリスクとワクチンのリスクを比べた場合にワクチンリスクの方が少なくメリットが大きいと判断して接種しています。小児への接種を反対する方は、死亡者がいないなどのデータをもってきて打つ意味がないというのですが、小児でも入院が必要になる場合や、複数の臓器に炎症が起こるMIS-C(多系統炎症性症候群)があるし、米国では亡くなっている子が850人以上います(※)。
大人の新型コロナ感染症を診ていても感じることですが、新型コロナの怖いところは、感染した時の症状や合併症が多彩で個人差も大きくどうなるかわからないという「予測不可能」なところです。ワクチンは大規模な調査から、実際の感染症よりも何が起こるか予測しやすい面があります。感染リスクが2年以上続いており、今後も続くことを考えるとワクチン接種にはメリットがあると考えています。
※引用元:CDC「Provisional COVID-19 Deaths: Focus on Ages 0-18 Years 」(外部サイト)
曽宮
新型コロナウイルスに感染したことのない子どもたちは、そもそも免疫がないわけですよね。子どもたちが感染したときには大人と比較して軽い症状で済むことも多いけれど、実際に発熱や後遺症で苦しむこともあるわけです。親御さんにとって子どもが風邪にかかるのは、見ているだけでつらいので、子どもを守りたいという感情として接種させたいと思うのもごく自然だと思います。もちろん臨床試験のデータも大前提として大事だけれど、感染に対して不安を持つ子ども自身や、親御さんの感情を無視してはいけないと思います。幼い子を持つ親にとっては、子どもがいつワクチン接種できるのかが気になるところだと思いますので、安全性と有効性を確認しながら迅速に進められることを願っています。子どもへの接種はとんでもないという考えの方もいると思うのですが、希望する方への接種の機会が提供されることが重要だと思います。子どもへの接種に否定的な人はしなくていいのですが、接種したい人ができる環境になってほしいです。

子どもへの接種について 専門家の見解まとめ
・コロナ感染時の子どもの重症化・死亡例は少ないのは事実だが、合併症や後遺症が起きてしまう可能性もある
・感染のリスクとワクチンのリスクを比べた場合にワクチンのリスクの方が少なくメリットが大きいと判断できる
・接種したい人が接種できる環境は必要

―オミクロンがコロナの変異ウイルスとして弱毒化してきていて、このままコロナ変異ウイルスが終息する表れなのでは、という話も耳にします。オミクロンが弱毒化していて終息にむかうのであれば3回目の接種を必要に感じないのですが、実際はどうなのでしょうか?

木下喬弘
オミクロンの病毒性はデルタに比べて入院する確率が半分くらい、ICUに入る確率が4分の1くらい、死亡する確率が10分の1くらいだろうと推定されています。ただしデルタはもともと病毒性が強くなっていたため、オミクロンと従来のコロナウイルスを比べると、そこまで大きく変わらないのではないかとも考えられます。「弱毒化」というのはあくまでデルタに対して用いられている言葉ですし、ワクチン接種により重症化率が下がっている面もあるので、ウイルス自体の病毒性がどの程度弱くなっているのか正確なところはまだわかっていません。
黒川友哉
コロナウイルスの変異は人間にコントロールできないので、弱毒化するかはわからないと思います。ただ治療薬を作るのは人間がコントロールできます。いま、より重症な人に対するお薬から開発がされていますが、これは薬の開発として自然な流れで、臨床試験のやりやすさからもあります。ただ重症化しない人への治療薬も開発されはじめているので、戦いやすくはなっていくと思います。コロナの弱毒化を期待することは神頼みと同じです。そうではなく、治療薬の開発により戦いやすくなるまでは自分たちが今できる、ワクチンや感染対策によって凌ぐのが良いのではないでしょうか。
曽宮
WHOがオミクロンを懸念される変異ウイルス(VOC)に認定したのが11月末ですね、そこから短期間であっという間に世界中に広まってしまいました。オミクロンが従来の変異ウイルスと比較して感染性が強い一方で病原性が低いというのはある意味ラッキーだったのですが、今後、病毒性が高くてかつ感染力が強い変異ウイルスがでてくる可能性はあります。オミクロンは比較的大丈夫だったとしても、将来の新たな変異ウイルス出現のリスクと、そのリスクがわずか数ヶ月で激変してしまうことは念頭に置かなければならないと思います。ワクチンは将来の感染や重症化のリスクを下げるために行うものですので、将来のリスクに対して前もって備えておくのが大事です。ブースターショットで目の前のオミクロンに対して備えるということはもちろん重要ですが、今後出現する可能性のある新しい変異ウイルスに備えるという意味でも大事です。新たなVOCが出現してあっという間に世界中に広がってから、慌ててブースターを打ちたいと思っても間に合わない可能性があります。私はオミクロンで終わりではないと思いますので、将来の不確実なリスクに備えておくというのが大事だと考えます。
3回目接種について科学的なエビデンスは詰みあがってきていて、少なくとも接種直後はオミクロンに対して感染や発症の予防に有効であることがわかっていますし、副反応も3回目が特別ひどいわけではなく2回目と同等程度ということがわかっています。若年層にも全員必須というわけではないですが、高齢者やハイリスクの方を中心に接種を進めていく必要があると思います。
いまはまだ接種体制が整っていないようですが、日本は1回目2回目がものすごい速さで進んでいったので、2月以降に接種が進むことを期待しています。
英国保健省発表資料(英語・PDF形式)(外部サイト)をもとにYahoo! JAPANで画像制作(制作協力:峰宗太郎)

コロナは終息に向かっている? 3回目の接種の必要性について 専門家の見解まとめ
・コロナウイルスは変異によって、弱毒化するかはわからない
・治療薬の開発などでコロナウイルスと戦いやすくなるまではワクチンや感染対策でしのぐという意識も必要
・3回目の接種はオミクロンのためだけではなく、その後の新しい変異ウイルスに備えるためにも大事


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