【医師が解説します】ワクチン4回目接種 気になる疑問をおさらい

 

取材・執筆:末吉陽子(やじろべえ) 制作協力:忽那賢志医師(大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長)

新型コロナワクチンの4回目接種が、2022年5月25日からスタートしました。接種期間は2022年9月30日までの予定。対象者を「3回目接種(※1)から5か月以上が経過した60歳以上の人、および18歳以上60歳未満で基礎疾患を有する人、その他重症化リスクが高いと医師が認める人」に限定して実施されています。
オミクロン株の全国的な感染拡大が減少傾向にあり、マスク着用の緩和が進む今、なぜ4回目接種が必要なのでしょうか。感染症専門家の忽那賢志医師が、4回目接種に関する疑問に答えます。
※2022年6月22日時点の情報をもとに作成しています。

4回目接種は「重症化しやすい人の重症化リスクを減らすこと」が目的

――まず、3回目接種の進捗(しんちょく)について伺います。現在、3回目接種を完了した人は国内で60%(2022年6月7日時点)です。諸外国と比べてどのような感想をお持ちでしょうか? 3回目接種は国によってバラバラだと思います。イスラエルのように進んでいる国もありますが、シンガポールで80%、ヨーロッパで60%、アメリカは50%行ってないくらい。
2回接種が80%を超えた日本が3回目も進めていく余地はありますが、若年層への意義を考えると3回目も80%を目指すのか、というと難しいところ。60%というのは決して低い数値ではないと思います。

――では、4回目接種について教えてください。なぜ、4回目接種が必要なのでしょうか? 4回目の接種は、対象者を「18歳以上60歳未満で基礎疾患がある人(および重症化リスクが高いと医師が認める人)、および60歳以上の人」と限定的にしています。こうした人たちは、3回目接種から一定期間経つと再び重症化リスクが上がりますので、リスク回避の目的で実施しています。

――新型コロナウイルス感染症にかかわる予防接種は、感染症の緊急のまん延予防の観点から、予防接種法に基づいて「接種を受けるよう努めなければならない」と規定されています。4回目も同様でしょうか? 18歳から59歳までの基礎疾患を有する人、および重症化リスクが高いと医師が認める人については、4回目接種では「努力義務」を適用していません。一方、60歳以上は「努力義務」が適用されます。いずれにしても、接種は強制ではなく、ご本人が納得した上で接種をしていただくかたちです。
――3回目までは、12歳以上の人を対象に感染予防の目的も含めて接種していました。4回目接種は「感染予防」ではなく「重症化予防のため」ということでしょうか? はい、その通りです。現状、4回目接種に関しては、重症化予防の有効性は認められていますが、感染予防効果の有無は十分なものではありません。ですので、重症化予防に主眼を置いた接種ということになります。つまり、4回目は「自分が感染しない・周囲の人に感染させないため」に接種するというよりも、「重症化から身を守るため」に接種する意味合いが強いとも言えます。
――接種間隔について伺います。4回目接種は、3回目から5カ月以上が経っていることを条件にしています。この間隔の根拠とは? 4カ月とか5カ月の数字に明確な根拠があるわけではありません。ただ、3回目接種から時間が経てば経つほど重症化はしやすくなるので、そのリスクが上がるまえに打ちましょう、ということです。日本では3回目を最初の頃に打った人は4カ月あいていますし、政府としては5カ月間隔と決めた、と。ワクチンのロジスティックの都合もあるのかもしれないですが。

4回目の副反応は? 注目のワクチン「ノババックス」は適用外

――接種回ごとの副反応報告(※)によると、副反応はファイザー社製・モデルナ社製ともに、2回目の割合が最も高く、3回目は2回目より低い割合であることが報告されています。4回目はどうでしょうか? 4回目の接種者数はそこまで多くないので、まだはっきりとしたことは分かりません。ただ、医療従事者を対象に、副反応が見られた割合を調べたところ、60歳以上で何らかの局所症状があった人はモデルナ約81%/ファイザー約70%でした。25歳から60歳未満になると、モデルナ約83%/ファイザー約88%と、副反応は若い人の方が出やすいことがわかります(下グラフ参照)。この調査を踏まえると、副反応の出方は3回目接種とそこまで変わらないと考えられます。

出典:The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE「Efficacy of a Fourth Dose of Covid-19 mRNA Vaccine against Omicron」
――3回目接種では、国内承認4例目の武田社ワクチン「ノババックス」の接種がスタートしています。4回目はノババックスを選べるのでしょうか? 今のところノババックスは、4回目のワクチンとして選べません。接種対象は初回接種(1回目・2回目接種)、追加接種(3回目接種)の18歳以上の人です。ノババックスは、ファイザー社・モデルナ社のmRNAワクチンと性質が異なります。従来使われている不活化ワクチンと呼ばれるものの一種であり、比較的、副反応があまり多くないワクチンです。ただ、4回目接種に関しては、現時点では感染予防効果・重症化予防効果は明らかではありませんので、これからデータを集めてからの判断になると思います。

4回目接種の対象者は拡大する? 今後のワクチン接種の見通し

――現在4回目の対象外の人は、今後対象になる可能性はありますか? まだ、はっきりとは分かりません。ただ、現在対象外の人で、3回目まで接種した人も、時間経過によって重症化リスクが高まってくると思います。今後の研究次第ではありますが、感染状況なども踏まえた判断になるはずです。
――これから先、ワクチン接種がどのように実施されるとお考えでしょうか? 定期的にワクチンを接種していくことになるのでしょうか? 高齢者施設でクラスターを起きにくくするために、先手を打ってワクチンを接種するといった対策は必要になってくると思います。つまり、ワクチン接種で重症化しやすい人たちを守っていくという方向にシフトするのではないでしょうか。というのも、第6波までの傾向を見ていると、感染者数をワクチン接種で減らすというのは、かなり難しいと考えています。

――これまで流行を繰り返してきたわけですが、感染者数を抑えることは難しいということですね。 そう思います。本来、これ以上の変異株を生み出さないためにも、世界全体で感染を限りなく抑えていくことが望ましいのは確かです。ただ、仮に新たな変異株が出現したとして、感染拡大を抑えるために再び厳しい行動制限をするべきか、というと現実問題として難しいはずです。幸いなことに、予想される変異株にも現在のワクチンで重症化予防効果はあると言われています。三密回避など基本的な感染症対策は引き続き必要ですが、経済活動との両立も重要ですから、ゼロリスクを求め続ける段階ではないと思います。感染すること自体は、ある程度許容されていく方向に移行するのではないでしょうか。
――では最後に。2年以上続くコロナ禍を経て、今あらためてどのようにコロナと向き合えば良いのか教えてください。 感染しない・させないために心掛けたい基本的な感染症対策は、しばらく継続されるべきだと思います。とはいえ、社会の機能を維持するためにも、感染リスクのある行動もある程度許容していかざるを得ない状況にあると思います。その中で、過剰な感染症対策は徐々になくしていき、本当に必要な対策だけに集中していく意識が重要だと思います。

制作協力
忽那賢志
感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。

(※1)3回目接種に相当するワクチンを受けた人とは、「海外在留邦人等向け新型コロナワクチン接種事業で3回目接種を受けた人」「在日米軍従業員接種で3回目接種を受けた人」「製薬会社の治験等で3回目接種を受けた人」「海外で3回目接種を受けた人」を指す。ただし、日本で3回目接種について薬事承認されている、ファイザー社ワクチン(12歳以上用)、武田/モデルナ社ワクチン、武田社ワクチン(ノババックス)、復星医薬(フォースン・ファーマ)/ビオンテック社製の「コミナティ」およびインド血清研究所が製造する「コボバックス(COVOVAX)」のいずれかを接種している場合に限る。

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